「なぜこれで心神喪失なのか」
刑事事件の被告は、心神喪失と判断されると罪を問われず、治療を受ける。さらに治療後の社会復帰促進まで検討することが「心神喪失者等医療観察法」で定められている。
ただ、被害者や遺族はやり切れない。公開される情報は限られ、加害者の権利が重視されているように感じる。裁判が開かれず真相解明の機会もない。
「なぜ夫は殺されたのか」「男性の治療はどうなっているのか」
事件から5年がたった今も、真理子さんの苦悩は続いている。
信也さんが働いていた「児童養護施設」は、さまざまな事情で親元を離れた子どもたちが暮らす。職員は養育を手助けしながら生活を共にし、退所後には自立をサポートする。
信也さんは真面目で正義感が強かった。入所する子どもたちと一生懸命に向き合い、休日によくキャンプやサイクリングに出かけた。入所者には「父親のような存在」と慕われ、児童養護関係者からは「次世代のリーダー」と期待された。厚い信頼を寄せられた施設長だった。
逮捕された男性は、信也さんが長く支えた入所者の一人だった。12年、母親の養育困難を理由に入所。高校時代を施設で過ごし、15年に18歳で退所した。アパート契約では信也さんが連帯保証人を引き受けた。壁を壊すトラブルを起こした際も、100万円を超える修繕費を個人で肩代わりしようとした。
事件数カ月前、男性は家賃の滞納などで住んでいた家を失い、職場から失踪。行方が分からなくなった。2月25日午後、突然施設を訪れ、勤務中だった大森さんを殺害。現行犯逮捕された。
男性は取り調べに「施設に恨みがあり、誰でもよかった」と供述。さらに次のように不可解な主張を繰り返した。「職員に頭の中を見られていた」「ストーカーをされたから、やりかえした」。程なくして、精神状態を調べる鑑定留置が始まった。
男性は19年5月、「刑事責任能力がない」として不起訴処分になった。真理子さんに地検から詳しい説明はなかった。手元に届いた通知書はわずか二行。
「心神喪失で不起訴とする」
夫の名前は記載すらなかった。「私は被害者遺族ではなくなってしまった」。そう痛感させられた。
市民で構成し、不起訴の妥当性を判断する検察審査会に望みをかけた。いったん「不起訴不当」と議決が出たが、検察は2020年4月、再び不起訴とした。理由は前回と同じ、「心神喪失で罪に問えない」だった。
真理子さんの願いは、事実を知ること。しかし、自分で申し出なければ情報は得られない。さらに、その情報すら限られているのが現実だった。遺族にとって、真相を解明する刑事裁判の場を奪われることはつらすぎる経験だった。
被害者支援に取り組む濱口文歌弁護士はこう指摘する。
「精神疾患を抱える加害者の名誉やプライバシーは尊重すべきだが、本来保障されるべき被害者らの権利が侵害されてはならない。被害者の立場を重視した法改正を検討すべきだ」(抜粋)
「なぜ夫は殺されたの?」5年後の今も続く遺族の苦悩 裁判官と受け答えができた加害者は「心神喪失」、公判なく真相は不明のまま… | 新潟日報デジタルプラス (niigata-nippo.co.jp)
引用元: ・【社会】「頭の中を見るな!」 心神喪失男、人を殺しても不起訴で社会復帰に向け入院…一方、遺族は殺人犯の現状も知ることができないまま
そうか!頭の中に、爆弾が!
ほんと、加害者が守られて被害者が守られない司法って、どういう経緯でできたんだ?
自分が見続けているんだよ
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