不妊手術の要件を定めた母体保護法は不妊手術を原則禁止し、生殖に関する自己決定権を制約して違憲だとして、首都圏や関西地方に住む20~30代の女性5人が26日、国に計500万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。弁護団によると、この要件の違憲性を問う訴訟は初めて。提訴後に記者会見した原告らは「子どもを産むことを望まない人の選択権を認めてほしい」と訴えた。
◆日本は遅れている「性や生殖について自ら決定する権利」
母体保護法は不妊手術について
(1)妊娠または分娩(ぶんべん)が母体の生命に危険を及ぼす恐れ
(2)既に数人の子がおり、かつ分娩で母体の健康度を著しく低下する恐れ
のいずれかの要件を満たす場合に限って認め、それ以外の理由で不妊手術した医師らに罰則を設けている。
原告はいずれの要件にも当たらないが、生殖機能がある身体への嫌悪感や、恋愛感情や性的欲求を抱かないなどの理由で子どもを産むことを望んでいない。「子どもを産むか否かを決めることは人生を形成する上で重要な権利」であり、要件は個人の尊重などを定める憲法に反するとしている。
弁護団によると、人口増加が国策だった戦時体制下に制定された旧国民優生法(1940~48年)は不妊手術を原則禁止。戦後成立した旧優生保護法で現行法と同様の規定ができたが、障害者には強制不妊を認めた。96年に障害者差別に当たる条文が削除、現行法に改正されたが、不妊手術の要件は維持された。
会見には原告5人中4人が出席。梶谷風音(かじやかざね)さん(27)は10歳ごろから身体に違和感を抱き、昨年9月、海外で不妊手術を受けた。「日本では子どもを産まない人の存在が想定されず、伝統的家族観からそれた生き方をすると否定される。訴訟を通じ、一度きりの人生を自分らしく生きていいんだと多くの人に勇気を与えたい」と語った。
亀石倫子弁護士は「不妊は本来個人が自由に決定できることなのに、家父長的価値観や道徳によって常に国家に管理されてきた」と指摘。欧米などで浸透する性や生殖について自ら決定する権利「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」の認識が大幅に遅れていると強調した。(太田理英子)
引用元: ・「子どもを産まない権利も認めて」戦時下から続く、原則禁止の不妊手術要件は違憲と提訴 (東京地裁) [少考さん★]
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