石川県内の風力発電は74基で、うち73基が能登地方にある。地震前に稼働していたのは珠洲市30基、輪島市11基、志賀町22基、七尾市10基の計73基で、最大出力は合計で約13万キロワット。県中央部の内灘町にある1基は2017年から運転を停止していた。
◆ブレードが落ちた…原因は不明
本紙は、能登地方で稼働する全事業者に取材。少なくとも2基でブレードに被害があった。HSE(茨城県日立市)の連結子会社「能登の風」が運営する志賀町富来地域の風車は、長さ41メートル、重さ約8トンのブレード1枚が折れて一部が地上に落下した。珠洲市では日本風力開発(東京都)の珠洲第2風力発電所で長さ34メートル、重さ約6トンのブレード1枚が破損した。いずれも原因は分かっていない。
強い揺れで自動停止したり、施設を動かす電源が使えなくなったりして、運転を停止した施設もあった。
風力発電に関わる有識者らでつくる日本風力エネルギー学会(東京都)の上田悦紀理事によると、大型風力発電施設が地震で大きな被害を受けた事例は少ない。過去の事例は鉄塔や基礎の損傷で、ブレードが損傷した例はないという。
◆道路も寸断、近寄れない
珠洲市や輪島市では道路の寸断などで近寄れず、ドローンや望遠カメラでしか被害状況を確認できていない施設もある。輪島市の「輪島もんぜん市民風車」の担当者は「被害の全容がつかめず、運転再開の見通しが立たない」と明かす。2月中に稼働を再開できたのは、日本海発電(富山市)が運転する志賀町福浦港の9基にとどまる。
地元住民団体「能登の風力発電を考える会釶打(なたうち)」は2月中旬、七尾市中島町の虫ケ峰風力発電所にある10基を視察。変電設備が傾いたり、発電施設の基礎と地面の間にすき間ができたりしていたほか、施設に向かう道に亀裂が入っていた。代表の唐川明史さん(77)は「被害は深刻。風車を建てたことで地中や水脈に与えた変化が今後表れるのでは」と話した。
NPO法人「防災推進機構」理事長の鈴木猛康・山梨大名誉教授は「(施設やその周辺の)安全性が確認できないままでは、土砂崩れのリスクもある」と指摘。「能登半島地震を機に、全国の再生可能エネルギーの計画も調査が見直されるべきだ」と訴える。
◆設置計画の見直しは必至
能登地方では風力発電の設置計画が多い。2月末時点で181基について、工事前に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きが進む。同じ場所に計画されている施設があり、実際の稼働数はこれより少なくなる見込みだが、最大出力は181基合計で約73万キロワット。単純比較で、志賀町にある北陸電力志賀原発1号機の出力54万キロワットを上回る。
これらの計画に市民団体などは「開発行為で山の保水能力が低下、土砂崩れや川の氾濫を招く恐れがある」などと中止や見直しを求めている。能登半島地震では強い揺れだけでなく津波や地盤隆起、大規模な土砂崩れが相次ぎ、懸念の声が強まるのは避けられない。
石川県によると、事業者がアセスメントを進める場合は地震の影響を確認する予定だが、現時点で見直しを働きかける方針はないという。
東京新聞 2024年3月11日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/314331
引用元: ・能登半島地震「風力発電」大打撃 直後全停止 風車破損 電源使用不能 [蚤の市★]
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